[タイトル] オーウェルの薔薇
[著者] レベッカ・ソルニット [訳]川端康雄/ハーン小路恭子
[形式] 単行本
[金額] ¥3,630
[内容] ジョージ・オーウェルの庭への情熱に光をあて、彼の人生と思想を探り、自然と人間の過去と未来を問う。ジョージ・オーウェルが一九三六年に植えた薔薇の生き残りとの出会いから、見過ごされてきた彼の庭への情熱に光をあて、精神の源を探るソルニット。豊かな思索の旅は、オーウェルの人生とその時代から、化石燃料としての石炭、帝国主義や社会主義と自然、花と抵抗をめぐる考察、薔薇産業のルポ等を経て、未来への問いへと続く。(Amazonより)
[感想]なんと言ったら良いのかわかりません。
[雑記]新聞の書籍紹介欄に載っていたのを見てうっかり買ってしまったものですが、読み始めて2ページ目で後悔しました。
とりあえず、読みました、というか全部ページをめくりました。
バラについてだけ記録しておきます。
1936年のこと、ひとりの作家が薔薇を植えた。
1行目
この始まりに騙されました。
騙された人が圧倒的に悪いわけですが。。。
結局のところ、ジョージ・オーウェル(George Orwell)の作家論なのだと思います。
オーウェルはイギリス人ですから庭もバラも大好きだったようで、著作にもしばしばバラが登場していたようですが、書いた内容は社会派なものみたいです。
著者のレベッカ・ソルニットはアメリカ人の著作家ということです。
オーウェルのバラ好きのところを拡大して、バラを中心にしてオーウェルとその時代背景を語っていこうという趣向だったようです。
私が馴染めなかったのは翻訳でした。
おそらくとても正しく翻訳されたのでしょう、指示代名詞の出て来方とか語順とか、英語がそうなっていてそれを訳して英語のテストだったら満点かもしれません。
でも読み物としては若干違和感がありました。
しかも二人で手分けして訳していました。
二人ともバラにはあまり詳しくない方かもしれません。
「雑種のティーローズ」という訳を複数見ました。
きっと「Hybrid Tea Rose」という英語だったのではないかと思います。
「茶碗の受け皿ほどのピンクの花を咲かせていた。」という訳もちょっと怪しいと感じています。
では、
ここからは、楽しくバラの話をいたしましょう。
上記の1行目にもあるように、オーウェルは自分の庭にバラを植える人でした。
といってもローズガーデンを作ったほどではなく、果樹などと一緒にバラが7本とかそんな感じです。
しかもディスカウントストアのようなところで6ペンスで買ったとか。
今現在だと6ペンスは10円弱くらいですが、1900年代前半ではどういうレートだったのか、まぁ何にしてもお値打ち品買いだったわけでしょう。
バラの種類は「アルバーティーン薔薇」というのだけが出てきています。
違う箇所には「フランスの園芸家アルベール・バルビエが1921年に品種改良によって作り出したアルバーティーン薔薇か、その亜種だと言われている。」と出てきます。
こっちでは「か、その亜種」を付ける?と私の血圧が上がります。
著者さんはいろいろな方面からバラの勉強をしたようです。
「どこよりもすごかったのはチベット高原の野薔薇だ。」と書いています。
そうなの?
何がどうすごかったのか気になります。
バラの本ではないのでそういうところが書いていないのですよ。
過去のバラのお勉強もしたようです。
「1922年にハーストが出した商用カタログには1000種もの薔薇が販売用にリスト化」
「もっとも香りのよい50種の薔薇」
「50種の標準種とつる薔薇」
「ボタンホールの挿し花に最適な20種」
例として、
アイリッシュ・ファイアーフレーム
アドニス
レイディ・レディング(レディング侯爵夫人アリス・アイザックスの尊称)
スノウ・クイーン
レッド・レター・デイ(祝祭日)
ゴールデン・オフィーリア
ロリータ・アーマー(米国の富豪の娘)
マーメイド
ロサンジェルス
などなど。
さすがイギリスです。
1922年のカタログに1000種!
ボタンホールの挿し花に最適な20種!(何のバラでしょうねぇ^^;)
そしていま現在私が知っているバラも含まれています、それも凄いです。
バラの歴史もお勉強したようです。
「1792年から1824年にかけて、チャイナ・スタッド・ローズとして知られることになる四種の中国産の薔薇が英国に持ち込まれた。」
「中国産であり、少なくともそのひとつはイギリスに入る前にスウェーデンで栽培されたものだったにもかかわらず、薔薇には英国人男性の名前がつけられた。」
名前の件、ご尤もと思います。
そして、
「有名な薔薇のブリーダー、デイビッド・オースティン」も同様だと言います。
「彼はそうした薔薇のすべてをイングリッシュ・ローズと呼び、文学や社交界、歴史から取った英国的な名をつけた。」
チャイナ・スタッド・ローズの話と、たとえ交配に中国産のバラを使ったとしても自分で工夫して作出したオースティンさんの話は別物なのでは?と思ったりします。
そしてコロンビアの切りバラ工場にまで足を運んでいます。
「1平方メートルにつき年間で104本の薔薇が採れる」
「ヴァレンタインデーに向けて600万本」「母の日に向けてはまた600万本」
「冷蔵トラックが1台ごとに400箱」
「ひとつの箱には330本の薔薇」
「747型機1台には5000箱つまりは165万本の薔薇」
がコロンビアからマイアミに飛んで、アメリカ全土に配送されるとのことです。
これは脱炭素方面の話の中の数字ですが、こんなのを想像したら切りバラを見て気持ち悪くなりそうです。
これは著者さんが取材したコロンビアのバラ工場の話であって、世界の切りバラ市場の話ではありません、念の為。
最後にオーウェルに戻ります。
オーウェルは「自分の墓に薔薇を植えてもらうように言い遺した。」そうです。
著者が確かめに行ってみたところ、
「まとまりのない赤い薔薇が1本、そこに花を咲かせていた。」のだそうです。
どうなのでしょう。
それで良かったのでしょうか。
剪定したり肥料をやったりしないとちゃんと保てない植物を植えるのは少々難がある気がしてなりません。
野菊に囲まれたお墓だってイメージは素敵ですが、ハダニだらけのお墓だったら嫌です。
イメージだけで頼んではいけない気がします。
以上、
なんだかんだとバラを持ち出してみました。
結局ジョージ・オーウェルがどんな人なのかわからなかったのは残念です、えぇ、本当です。
コメント
もやもやイライラしつつも読み終えたのですね。お疲れ様でした。そのもやもやが解説で昇華されたのなら良いなぁと思いました。
茶碗の受け皿…ねぇ。もしかしたら原文がそうなっていた可能性もあるけれど…サイズの話なのかも知れないけれど、バラおたくはハスに構えてしまうわけですよ。カップ&ソーサー、形の話じゃないの、とね。
これでは先に進めなさそうです。読み通せたのはロズレさんの意思の強さあってこそ、かもしれません。
イギリスはそもそも虫が少ないので、意外と放置していても何とかなるのかもしれないな〜なんて、イギリスのお墓で見た花々を思い出しました。
もしやと思って調べると、ネットにオーウェル氏の墓の写真があるじゃありませんか! ゆったりシュラブの濃いめのピンク色のセミダブルらしきバラが咲いています。え、赤い薔薇?(・・;)
それはさておき、葉がツヤツヤに茂っているので、どなたかちゃんと管理されているのではないかと思いました。
余談もいいとこでしたね。
言われて気が付きました。
お墓の写真は、お墓と同じくらいの背の高さの赤っぽいバラの写真と、お墓の足元にちんまりあるピンクのバラの写真の、2種類あるみたいです。
理由はわかりません^^;
頑張って我慢して3,630円の元は取れなかった気がしますが、まぁいいです、こんなこともあるさ。
なにしろ世界のバラですから、いろいろな角度で見られていて当然です。
そして今ふと思い出しました。
役所で外国人の手紙などの翻訳をしている人が、やってほしいのは翻訳だ、それ以外の余計なことはするなと怒られた話を聞いたことがあります。
読みやすくなどと考えるのは仕事じゃないということになるのでしょうか、どうかな。
とにかく世界はいろいろなのですね。
翻訳の重要性を再確認させられましたね。
昔、私よりずっとイタリア語が堪能な方が通訳として苦情が上がったことがありました。
彼女は「路肩」という日本語をご存じなかったのです。
ですから通訳や翻訳には、やはり少なからずその世界を知っている方にお願いする必要性があるように思います。
本当にそうですね。
やっぱり母語がしっかりあってこその翻訳ですね。
これからの小中学校もその順番を忘れないでいて欲しいです。
そして、子供の頃赤毛のアンをあんなに楽しく読ましてくれたことに、もっともっと心からの感謝をしないといけないと思いました。