明治のイソップ物語

明治時代に翻訳されたイソップ物語を読みました。同じ話しを二人の翻訳で。
面白いです。
私は面白いと思います。
たぶん同じ英語の文章を翻訳したのでしょうけれど翻訳者によって全く印象の違う話になっています。
著作権保護期間が満了しているので、全文を書き出します。
思うようにルビがふれないので一部かなや現代字に書き換えます。
 
 
イソップ物語 雨谷幹一訳 明治40年12月出版
『薔薇とハゲイトウ』
庭園のうちなる薔薇の直ぐわきに植えられたハゲイトウが薔薇に向かって「薔薇さん、お前さんは実に美しいな、神様も人間もお愛しなさる筈だ。其美しい色、かんばしい薫り、なんといふ羨ましい事であらう」と申しますと薔薇は「ヤ ハゲイトウさん、お前さんはさう言って下さるが、私の盛んといふのはほんの一時で、それも酷らしい人間の手にでもかかって、折角の花を咲かせた処を爪切られでもして御覧なさい、其短い盛さい思ふやうに楽しむ事は出来やしません。其処へ行くとお前さんなんか命知らずで萎むという事もなく、色を変へる度に若返って一生栄えることが出来るのだから、却って羨ましい話だ」と答へました。誰でも其身になってみると、外から見る程気楽なものではありませんから、各々其本分を守って決して人を羨んだり、そねんだりしてはいけません。
 
 
イソップ物語 馬場直美訳 明治43年11月出版
『薔薇と鶏頭』
花園の中で鶏頭花(けいとう)が薔薇に向ひ「ほんとに貴方はうつくしいですね、ですから、神様からも、人からも寵愛されるのですね」といひますと薔薇はつむりをふって「イエイエ私のうつくしいなぞはほんの少しの間で御座いますよ。それよりも貴方はいつまでも枯れるの萎むのといふことがなく、後から後からと咲き足して行って、いつでもお若く見えるのは、ほんとに羨ましいと思ふ位ですわ。」
華麗(はで)は一時ですが、地味はいつまでも飽きません。
 
 
 
何と言ったら良いのでしょうね。
教訓のイソップですから、翻訳物は全てを鵜呑みにするなとでも読み取りますか?
でも、何と言っても明治ですからね。
とは言え、私はこのオチにかなり唸ってしまいました。
 
私のことですから、薔薇のお話を拾いましたが、他の部分にも興味のある方は、国立国会図書館のサイトから近代デジタルライブラリーのページで検索してみてください。素晴しいデジタル検索システムです。
その昔卒論を書くのに国会図書館に通って何枚もコピーしてもらって高いお金を払ったことを考えるとPDFでダウンロードできるなんて夢のようです。(全部じゃありませんよ、著作権によります。)
図書館の方が1冊ずつ、そして1ページずつページをめくってPDFを作ってくださったのでしょう。古い本ですから機械では無理ですよね。それを考えると本当にありがたいことだと思います。
薔薇の園芸書もダウンロードしたので、つらつら読んで(明治の本はスイスイは読めません^^;)面白いことが書いてあったら本館にも載せたいと思います。(3年計画くらいで(笑))

コメント

  1. KAZZ より:

    [E:cat]昔の訳モノってなんでこんなにオモシロいんでしょう。それに同じ話なのにオチが違う。。「満点・大笑」です~。。。諺に置き換えたら「隣の芝生は青い」ってのと「美人は3日で飽きるがブスは3日で慣れる」←(諺かっ!?)ってところかなぁ?私はハデでお若くて長生きがいいなぁ。(アホか!)ケイトウも充分派手ですよねぇ、あのスパニッシュダンサーのドレスのようなフリフリ、私好きです。主人は「脳みそみたい」って言うけど。。。ケイトウって「命知らず」だったんだ~!勇ましや。。。「つむりをふって」って何?頭?バラが頭ふったら折れないか?。。。「イエイエ」って志村けん思い出すわ。。。「いつでもお若く見えるのは、ほんとに羨ましいと思ふ位ですわ。」ってやっぱり「思う位」の程度で、「私の方が上ね。」って言ってるじゃん。。。2つのお話共、結局薔薇の美しさが強調されているかんじ~。。。でも2つ両方一度に読むと、結局何が言いたいワケ?ってなっちゃうので、やっぱり「満点・大笑」ですぅ~。。。

  2. ラ・ロズレ より:

    奥が深いのか、意外と浅いのか?
    もしかしたら、英語の時点で何種類かの出典があったのかもしれませんね。各翻訳者の人生観が反映されているのでしょうか。
    やっぱり、鶏頭って褒められているようで実はあまり褒められていないような気がしますよね?薔薇って微妙に上から目線のような気がしますよね?
    先日、花材が野ばらと鶏頭の生け花の写真を見せていただいたところだったのです。8月なので野ばらのお花は咲いていませんでしたが、現実にありえる状況だと思うと、色々なストーリーで頭が暴走しました(笑)

  3. 呉 月嬢 より:

    ラ・ロズレさん こんにちは 呉 月嬢です
    薔薇と鶏頭のお話 興味深いですね
    月嬢は このお話を読んで この諺を思い出しましたが
    「美人薄命 醜女に病なし」
    こ・・コレは 決して け○とうさん が ブ・・(アワワ その美しくないということではなく あ~「ふつうの容姿」であるくらいに捉えてくださいませ
    気高く咲いて 美しく散るのか
    草むらに名も知れず咲いている花かで
    どっちがどうか ということになれば
    どっちがいいでしょうねぇ(笑
    ところで 月嬢の活けたお花
    のばらと鶏頭に雪柳でしたが
    雪柳は 「バラ科」 の植物なんですって
    春に小さな白い花を沢山つけます
    いけばなの先生いわく「一年を通して使える花材」と仰ってました
    雪柳はお花が咲いた時は白い泡立つレースのようでとても清楚です
    のばらさんとけいとうさんがお話しているところで雪柳さんは
    「えっと・・・アタシ いちおうバラの仲間なんだよね でも 丈夫で一年中活躍できるけど・・ う~ん どうしよ~ どっちの味方してもあれだし ここで口出したらなんだかもっとややこしくなりそうだし・・」
    と密かに悩んでいたかもしれません
    「薔薇と鶏頭と雪柳」と進化して
    平成のイソップ物語ができるかも
    ちゃんとオチはつくかな?

  4. ラ・ロズレ より:

    現代だったら、美人さんと、体が丈夫だけがとりえな子と、チョット小奇麗なお嬢さんが・・・えっと・・・どうなるのでしょう???
    今まで美人さんになったことがないので良くわかりませんけれど苦労もあるのでしょうね、3日で飽きるなどと言われますから^^;;;
    お庭では薔薇と鶏頭なんてあまり無い組み合わせかなと思っていたら、生け花で三つ巴で実現されていたので、このタムリーさがド壺にはまりました。抽選とはまたちがったお導きがあったのでしょうか(^^)