美しい文章を目指して

美しい文章を書きたいと思いながら選んだ本です。
ネットで書評などを見て決めました。
他にも読んでみたい本はありましたが、都合でどうしてもKindle版にしたかったので、文庫版しか出ていないものは諦めました。

【復刻版】谷崎潤一郎全集第21巻-「文章読本/現代口語文の欠点について/青春物語」

[著者] 谷崎 潤一郎
[形式] Kindle版
[金額] ¥186(Amazonポイント¥12 利用後)
[内容] 『文章読本』の元祖とも言われる随筆集

[感想]
金額の安さに目が眩んだため「版面固定型」の表記を見逃しました。
Kindle版といっても上下2段組ページのPDFを読むようなもので、iPhone読書には不向きです。
How To ものは読むつもりはありませんでしたが、大御所の文章読本がいくつかあることを知りました。
谷崎潤一郎、川端康成、三島由紀夫、丸谷才一、などです。
学生時代から近代は苦手としていたので、なんとなく最初の景気付けくらいの気持ちで1冊選びました。
昭和初期の本で旧漢字旧仮名の「さう云う點は」などという文章です。
これに引っかかる方にはまったく勧めできません。
内容は「われわれ日本人が日本語の文章を書く心得」が細かく書かれています。
目次を拾うと、
言語と文章、実用的な文章と芸術的な文章、現代文と古典文、西洋の文章と日本の文章、文法に囚われないこと、感覚を研くこと、(中略)品格について、含蓄について、などです。
昔はこうだったのに、今どきはなんだかんだ、と昭和初期の感覚で書いているのにも関わらず、現代にも通じるものがたくさんあり興味深かったです。
昭和初期ー大正ー明治ー徳川時代
令和初期ー平成ー昭和ー明治時代
明治の人から見た昭和初期、昭和の人から見た令和初期(今)。
谷崎の知識階級ぶって小難しい言葉を使うなという主張は、現代のオーバーシュート?クラスター?はぁ?と似たようなものではないでしょうか。
時代は繰り返しなのだと可笑しくなってしまいました。
小手先の文章論でははく歴史や精神から掘り起こしてあるので、自分の目指す方向性がよく見えるようになったのが収穫でした。
ただ、やはりこの時代の書き方の雰囲気が苦手なことには違いなく、後半の「青春物語」という随筆(エッセイ)は途中で挫折しました。

猫を抱いて象と泳ぐ

[著者] 小川 洋子
[形式] Kindle版
[金額] ¥645(Amazonポイント¥7 利用後)
[内容] 少年の数奇な運命を切なく描く。小川洋子の到達点を示す傑作(Amazonより)

[感想]
小川洋子さんは、芥川賞や本屋大賞を受賞しています。
本屋大賞の「博士の愛した数式」は映画化までされましたが、読んだのはこれではなく、Eテレの読書週間の背景に置いてある「人質の朗読会」でもなく、動物のタイトルで「猫を抱いて象と泳ぐ」を選んでみました。
どう選んでよいのか悩んだときはそれも有りだと思います。
レコードのジャケ買いみたいなものかもしれません。
でも、話の内容はそんな可愛いものではありません。
独特な内容であるにも関わらず流れるように読むことができるのが小川洋子さんなのだと感じました。
本当に、流れるなと思いながら読みました。
美しい文章を目指して、という趣旨で選んだのは正解だったと思います。
今回は文章の書き方を中心に読んだので内容の感想は抜かしますが、おそらくあまり軽く読めるようなものを書く方ではなさそうなので、他のタイトルは少し休んでから読むことを考えようと思います。

台所のおと

[著者] 幸田 文
[形式] Kindle版
[金額] ¥328(Amazonポイント¥2 利用後)
[内容] 五感を鋭く研ぎ澄ませた感性が紡ぎ出す、幸田文の世界(Amazonより)

[感想]
日本文学会の中でも大御所に属する方であると思われます。
美しい文章を探してその名前が上がるのはとても良くわかる気がします。
掲載短編の初出誌掲載年月を見ると、どれも昭和30年代から40年代です。
それにしては選ばれる言葉が少し古風です。
昭和30年代から40年代なんてついこの間だと思っている昭和の人間にはいささかショックでした。
言葉は本当にナマモノで、時代が滲み出るものなのですね。
あの頃の髪型やミニスカートや白黒テレビを思えばそんなものなかももしれません。
そんなわけで、丁寧に選ばれた言葉の美しさよりもそっちに気が行ってしまう私には、少し宝の持ち腐れだったでしょうか。

夜中の薔薇

[著者] 向田 邦子
[形式] Kindle版
[金額] ¥701(Amazonポイント¥3 利用後)
[内容] 最後のエッセイ集

[感想]
向田邦子さんは読んだことはありますが、文章の観点から読んでみたらどうだろうと、エッセイを選びました。
あまり考えずに「薔薇」を選択しました。
小川洋子さんの時もそうでしたが、私は悩んだらタイトルで決めることが多いかもしれません。
向田さんは内容が面白いので、文がどうのこうのという暇もなくどんどん進んでしまい、そういう意味であまり文章の参考にはならないかもしれません。
そして、あくまでも私の感覚ですが、向田さんは基礎の上にたっぷりの才能が乗っているために、凡人には真似ができないタイプの人だと思います。
そういう点でも参考にするものではなかったかと思いました。
途中からは楽しい読書に徹してしまいました。

鹿の王、鹿の王 水底の橋

[著者] 上橋 菜穂子
[形式] Kindle版
[金額] ¥3,309(Amazonポイント¥42 利用後)
[内容] 鹿の王1〜4と鹿の王 水底の橋の5冊セット。強大な帝国・東乎瑠(ツオル)をめぐる壮大な物語です。2015年の本屋大賞

[感想]
鹿の王は既に読んでいましたが、その後の物語である水底の橋が未読だったので、ついでにまた最初から読んでいます。
私にとって上橋さんの物語は、安心・安定、もっと言うなら完璧。
物語の内容もですが、文章の観点から再読しても非の打ち所が有りませんでした。
まだ再読の途中ですが、この結論は変わらないので、ここで〆ようと思います。


まとめ

今まで読んだことのなかった作家さんの本を読んだのはとても面白いことでした。
ついつい自分の好きなものばかりを読んでしまうものですから、敢えてそこから外れてみる勇気も必要かもしれません。
私の場合は、自分の事前の予想に反して谷崎本が役に立ちました。
谷崎潤一郎さんをナメていたわけではなく、文章読本という、いわゆるHow Toものか?と思ったものが案外深い内容だったということです。
日本の文章の歴史を学ぶことができました。
そして自分がそのどの部分に魅力を感じているかを認識することができました。
これは谷崎潤一郎さんだけが書いていることではないはずなので、超絶読みにくい同じ本を読む必要はないと思います。
小手先の書き方術ではない、日本の文章の歴史を紐解いた似たようなテーマの現代書を探すことをお勧めします。
たくさん本を読むことは必要ですが、闇雲に読んでも、前に進んでいるのか斜めに進んでいるのか横を向いてしまっているのかわからないと効率がよくありません。
自分の進みたい方向をしっかり見定めさえすれば、たとえゆっくりでも確実に前に進むことができます。
そのためにもうひとつ思ったのは、自分の好みでない文章に影響されないようにする、ということです。
才能があって使い分けられる人は問題ないのでしょうけれど、私は表と裏をちゃんと使い分けられるほど器用ではないので、変な多読をして好みでないものに引きずられないようにしようと思いました。
そしてもうひとつ気がついたことは、今まで選んで読んできた本の中で特に気に入ったいるものというのは、概ね自分の好みの方向に合っているものだったということです。
文章のどうこうを意識して選んだわけではないのに、良いものを選んで偉いぞ自分(笑)
自分の体は自分の食べたものでできている、と同時に、自分の読んだものでできている。
当然のことでしたかね(^^)

文章を商売にしているわけでもないので、ちょっとやそっと本を読んだくらいで何が変わるというものではないかもしれません。
でも、

千里の道も一歩から
ローマは一日にしてならず

一里を3.9Kmとすると千里は3,900Kmで、北海道から沖縄よりもっとあるそうです。
ローマはロムルスまで遡ると紀元前。
どちらにしても遠い遠い!
ということで、いろいろ参考にしながらぼちぼち頑張ろうねという、安直な結論に落ち着いたのでありました。とさ。

コメント

  1. Keiko より:

    読書の冬、え?

    特に女流作家の本を沢山選ばれたことは、女性としての美しい言葉遣いに大いに参考になることでしょう。

    Amazonのシステム、世界共通にしてくれないかなぁ?
    日本語版Kindleを申し込んで、一旦受け付けてくれたのに、実際には読むことができませんでした、残念。
    読んだ本で、私の体=心ができているのだとすれば、やっぱり日本文学を読みたいです。

    • ラ・ロズレ ラ・ロズレ より:

      気が向いた時が季節なので四季無視です(笑)
      DVDもでしたけれど、地域コードみたいの邪魔ですね。
      そういうところでもっとグローバルになって欲しいです。
      配送運賃かからないのだからいいじゃないですかねぇ?

  2. もも より:

    いいですね~。そういう大人になりたかった…。ロズレさんかっこいい。
    学生の頃、文章力を高めるには丸谷才一を読めと言われ、何冊か読みました。
    文章力は少しも上がりませんでした。吸収する素養がなかったんですね。ただ、旧かなづかいの文章を読むことには慣れました。
    向田邦子さんはねぇ。文章云々を忘れてしまうくらい吸い込まれたものです。結果、身になっていないという…(汗)。
    鹿の王は、最近おすすめに出てきて、ブックマークしてあります。( ̄0 ̄)〇!

    • ラ・ロズレ ラ・ロズレ より:

      丸谷才一さんの「文章読本」もありましたが、Kindle版がなかったので読みませんでした。
      気にはなったのですが・・・。
      好きな音楽、好きな絵、好きな本、周波数が合わなければ通り過ぎていくだけのこともあります。
      それはそれで良いのだと思いました。
      鹿の王は簡単なものではありませんが、物語も文章も奥行きがあります。
      脳のメモリをたっぷり空けて読んでください。
      お楽しみに(^^)

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