バラエン 其の参

「バラエン 新發賣品と特價提供號(昭和6年3月25日発行)」「バラエン 五月の特賣品(昭和8年5月1日発行)」から薔薇のページをご覧下さい。
 
まずは昭和6年から。
 
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「薔薇を御注文遊ばすには!」
遊ばすのですねぇ。
 
「新苗は精撰したる實生野薔薇砧木を以て接木したるもの。本年六月より連續開花します」
だそうです。今と変わりませんね。
 
さて、実際に販売されているのはどんな薔薇でしょう。目録の1番目と2番目を見てみましょう。
 
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金花鳥 壹圓
性強健なる四季咲純木性彩色優艶なる淡桃櫻曙底黄を彩り半紅色を加味する剣瓣八重咲き花容整然なる巨大輪芳香峻烈なる優秀銘花なり
 
春粧 八拾錢
鮮麗なるピンク色にし金色に底を彩り満開の上は全瓣淡珊瑚色を呈す芳香烈しき八重咲巨大四季咲純木性にして薔薇花中空前の珍種なり
 
どんな薔薇か想像できましたか?(笑)
”薔薇花中空前の珍種”って言われましても、ねぇ(笑)
一番高額なのが1円20銭。次に1円、80銭、70銭、60銭、50銭、35銭、30銭、一番お安いのが25銭です。
ちなみに、皆様ご存知のマダム・バタフライ(昭和6年には「マダムバツターフライと書かれています)は50銭です。
この頃は”巨大”というのが売りだったのでしょう、どの薔薇もみな巨大だと言い張っています。
 
 
次に昭和8年の目録です。
 
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ピンクなのです。(目がちかちか☆)
 
「最新優秀薔薇半額提供 五月の特價大奉仕に以下八種に限り半額奉仕いたします尤も此の八種は繁殖成績も良好在品數多數な品種揃ですけれども半額とは思切つた特價です」
 
「鳴鸞(七拾銭)」から「李園(貳拾五銭)」まで並んでいます。
思い切ったと自分で言っちゃうのですね^^;
 
明治時代から輸入薔薇に和名をつけたという話は以前ラ・ロズレでもしましたが、この目録では「薔薇直輸入代表種」と「超高級最新薔薇」は原名が書いてあります。
 
マツクレデースカーレット 壹圓
MCGREDY SCARLET H.T. (MCGREDY 1930)
英語名も、ハイブリッドティーという品種も、作出者、作出年も書かれています。
Redyがレデーなのは、まぁ仕方ありません。
このように詳細な情報は昭和6年の目録にはなかったので、薔薇販売が進化したのでしょうか。
これだと情報量は今と変わりませんね。
ただ、写真が、なにしろこのピンクですから、購入者はどんな薔薇なのか想像するのは大変だったかもしれません。
 
↓は、五月の特價大奉仕品です。
 
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「フジ」とカタカナで書いてありますが「不二」とも書かれるフラウカールドルシュキのことではないでしょうか?
「バラ數百種中雪白の巨大輪 本種に及ぶものは有りませぬ性質も特に強健です」
という説明があります。
「お値段もお安くございますから今までの様に一種一本や二本と言はず、十本百本と多數御植付下さい、其して惜げなくどしどし切花として御使ひ下さい」
だそうです。
百本とはまた(笑)
ちなみに百本だと「拾圓 荷造送料ニ圓」です。
 
 
如何ですか?
昭和の薔薇の目録、楽しいでしょう?
 
次は薔薇以外のページもご覧下さいね。
 

コメント

  1. ゆめ より:

    楽しいですね~!
    思わず笑っちゃいましたよ。
    品種の説明なんて、説得力十分(笑)
    ここまで書かれちゃ~想像力ふくらみ放題ですわ(ぷっ!)
    半額!ってところの説明がまたいいじゃぁありませんか。
    いっぱーい殖やしたから、買って~!ってことネ。なーんてついつい意地悪を(^^;;
    最後のフジ。不二。フラウ・カール・ドルシュキでしょうね~♪
    コレを1本2本と言わず、10本?!100本!?
    無理ですぅーーー!(爆)
    ものすごくぶっとい木になるのに・・・花を愉しむ前にみんなが傷だらけ~になりまする(笑)
    楽しいですね~!とっても、たのし♪

  2. ラ・ロズレ より:

    ね?ね?楽しいでしょ、でしょ?(強制(笑))
    山高帽のお父様はこの目録を眺めてあーでもないこーでもないと悩んでソロバンなどはじいていたのでしょうか、そして”またお買いになるのですかっ!いったい何処へ植えるおつもりですかっ!”とお母様に怒られていたのでしょうか。
     
    100本の値段が出ているということは本気で100本セットを売る気だし買った人もいるのでしょうねぇ。
    いったい何者が???

  3. KAZZ より:

    。。。私、こういう文章に妙~に反応してしまうんです。こういう文章がスラスラ書けたらステキです。一体どうやって勉強すればいいでしょうかねぇ。昔の人は学があったんですねぇ。それに、細かく専門用語も出ていて、流石日本人です。
    「お値段もお安くございますから今までの様に一種一本や二本と言はず、十本百本と多數御植付下さい、其して惜げなくどしどし切花として御使ひ下さい」。。このくだり、上品でかつドサクサでステキです。すごく気に入ってしまいました。

  4. ラ・ロズレ より:

    そりゃ、日本の文化のレベルは高いですから。
    (私はニッポン好き派♪)
    気に入って頂けて嬉しいです(^^)v
    KAZZさんのようなお方が100本ポンッ!とお求めになるのでしょうねぇ?(笑)
    今の時代100本セットはありませんけれど送ってみれば案外買えちゃったり?
    如何です?12円ですけど?(笑)(笑)

  5. Keiko より:

    ご無沙汰しました。
    決してバラエンに興味がなかったのではなく
    またしてもネットにつながらなかったのです。
    バラエン・・・あの時代の方々のバラ病さんたちがしのばれますね。
    巨大輪であることと並んで、強健種だということも声高にうたってますね。
    やはり育てるのは難しかったのでしょうね。
    モノクロからピンクのカラー印刷へ。フフ・・・
    そういえば子供の頃映画を見に行くと
    「総天然色」なんて端っこのほうに書いてあったような気がします。(笑)

  6. ラ・ロズレ より:

    度々のネットの不調、ストレス溜まりますね。
    ま、目肩腰の休養日だとでも思って潔くのんびりしちゃって下さい^^;
     
    ローザリアンの皆様は昔からかな~り重症の症状を呈していたようですね。
    その症状が現代まで脈々と!(笑)
    大輪とか強健とか芳香峻烈とか求めるものは時代ごとに微妙に違っているのかもしれませんが、結局みんな想定外な「お買い物」しちゃうんですよ。うんうん。